針では拾えなかった音が聴こえてくる?
針では拾えなかった音が聴こえてくる。
光学式アナログ・レコード・プレーヤー。
ところで、レコードを聴くために必要不可欠の、レコード針とカートリッジが、
存亡の危機を迎えている。今では各ターンテーブルと互換性のあるものを作るメーカーが
わずかに残っているだけだ。つまり、
「レコードが聴けなくなる時代」が静かに、刻々と近づきつつあるのだ。
そんな時代に登場したのが「光学式アナログ・レコード・プレーヤー」。なんと、針なしで
レコードを再生できるという代物だ。
埼玉県浦和市にあるエルプ社では世界で唯一、
光学式アナログ・レコード・プレーヤーの製造・販売を行っている。
「はじめてこの製品を提案したとき、誰からも賛同されなかったんですよ」と、
はにかむように語るのはエルプ社の千葉三樹社長。
本社工場にある試聴室には、この光学式プレーヤーがあるのだが、たしかに針やカートリッジ、
トーンアームさえない。そのプレーヤーに、1枚のレコードが吸い込まれる。流れてきたのは
ザ・カーペンターズの古い曲。
聴こえてくるカレン・カーペンターの声は、どこか懐かしく収録した時代の古さまで伝わって
くるような、味わい深い。まさに、デジタル変換処理を一切していないアナログの音だった。
光学式のレコード再生技術は元々、アメリカで基礎が完成した。
1988年、その技術者たちが製品化事業化への共同パートナーを求めるために来日したのだが、
パートナーに名乗り出た企業は1社もなかったそうだ。
そこで手を挙げたのが千葉さん。「この技術はレコード文化を絶やさないために必要不可欠だ。
誰もやらないなら、自分たちがやるしかない、と思ったのです」
それから10年。製造コストや開発費の問題、製造機器の調達や再生精度の向上など――。
製品化にこぎつけたのは1998年のことだった。
しかし、光学式アナログ・レコード・プレーヤーの滑り出しは「決して順調なものでは
ありませんでした。
すでに時代遅れのものと多くの人が感じていたのでしょうね」と千葉さん。
しかし徐々に、かつてレコードを聴いていた世代を中心にその評判は広がりを見せはじめた。
千葉さんは「CDプレーヤーと同じ感覚で扱える手軽さや針を使わないためレコードが劣化
しないこと針では拾えなかった繊細な音も再現できることなど製品のメリットも認められた
のだと思います」と語る。
2006年12月までに、累計販売台数1千台を越えるヒット商品となった。
「よくレコードとCDを同列で話す人がいますが、それは違うと思うのです」と、千葉さん。
「レコードはCDとは別の、およそ100年かけて培われてきた『レコード』という
文化のうえに成り立っています。
そこに込められた想(おも)いを感じながら、
レコードはレコードとして楽しんでもらいたいのです」。
光学式アナログ・レコード・プレーヤーには、レコードという文化を長く保存し、
楽しんでほしいという、技術者たちの想いが詰まっているのである。
↑※モデル価格は2006年当時※
株式会社 エルプ
世界で唯一の「光学式アナログ・レコード・プレーヤー」を製造・販売するメーカー。サイトでは視聴予約も可能。
いゃぁ~オークションで、たまに中古品が出てますね~(^。^)♪